設計の想い
家づくりにおける家族の方針
住まいは家族が安心して幸せに暮らしていくための場所。 家族の日常をより豊かにするための住まいづくりを共に築いていきたいと考えます。 時代に合った性能を追求することはもちろん必要であると同時にそういった数値やスペックでは語れない部分こそ大切であるとも考えます。 家づくりとは家族が幸せに暮らすための手段であり、家を作ることではなくその先にある家族の幸せな暮らしこそが家づくりの目的だと考えます。 その目的に向けて進んでいくためには、まず家族にとっての家づくりの方針を決めていくことが大切です。なぜ家づくりをするのか、家づくりを通して家族の夢は何なのかなど、設計するにあたりまず家族のそんな思いを共有したうえで家づくりを始めていきます。
暮らしの道
単なる動線だけではなく、光の道、風の道、空気の道、目線の道が整うことが心地よい暮らしにとって大切だと考えます。それらを「暮らしの道」と呼び、家族の求める暮らし方と土地の条件から最適なご提案をします。
家族の家づくりの方針が定まったら、まず家族の暮らし方についてお伺いします。家族がこれまでどんな暮らし方をされてきて、これからどんな暮らし方をしていきたいかをお聞きしながら家族の考えや想いを一緒に整理していきます。お聞きするのは部屋の広さや間取りの希望ではなく、あくまで家族の暮らし方です。それこそが家族にあった家の設計へと繋がります。そして敷地条件の整理も設計において重要な要素です。光や風の動きを捉える事、周辺環境に合わせた開口部の取り方が、心地よく暮らすためには大切な要素となります。心地良い家づくりのために、まずは家族の暮らしと敷地条件を整理していきます。
佇まい
家を建てるということは街並みをつくること、風景をつくることにもなります。永く、その場所で住み継いでいくためには周辺環境に配慮し落ち着いた佇まいのある家であるべきだと考えます。まず、できるだけ高さを抑えた設計とします。高さを抑えることで、家全体の重心が下がり、風景に馴染み落ち着いた佇まいとなります。そのためには丁寧な架構の検討が必要になります。
それぞれの家に対し細やかな検討を重ねることにより外観を整え、建てた時も、30年40年と時を重ねた後も街並みに馴染んだ家をつくっていきたいと考えます。佇まいをよくするために高さを抑えることは、無駄な建築コストを使うことなく構造的にも有利に働くという利点もあります。そして周辺の家にも光が入りやすくなるため、暮らしやすい地域の環境にも繋がるのです。
屋根のあり方
しっかりと軒を出した屋根が日本の家には適していると考えます。雨の多い日本では軒を出すことで、雨風による外壁の劣化から家を守ってきました。軒のない家と比べて軒のある家の方が寿命が圧倒的に永くなるのです。また屋根の役割には日射のコントロールもあります。傘のように軒のある屋根を架けることで、夏の日差しを遮り室内の温度上昇を防ぎます。反対に陽を室内に取り込みたい冬は、太陽の高度が低いため軒が出ていても陽を取り込むことができるのです。
断熱性や気密性が高い住宅であっても、日射のコントロールができていないと冷房負荷が増えて無駄なエネルギーが必要になってしまいます。軒のある屋根によって、快適な室内環境をつくりだすことができるのです。そして、軒を出すことによってうまれる軒下空間がウチとソトを繋ぐ中間的な領域として暮らしに豊かさをもたらしてくれます。屋根は永く住み継ぐことのできる家には大切な要素となります。
造作家具とディテール
暮らしの中にあるものが、手仕事によってうまれた設えであることはとても豊かなことです。永く使い続けることができ、そして触れたくなるものに囲まれる暮らしをご提案します。家族の暮らしに合わせ、空間にぴったりと馴染む造作家具は、使い込んでいくうちに愛着のある存在に育っていってくれると考えます。
また細かなディテールは、汎用性のある工業製品では絶対に生み出すことのできない心地良い空間へと繋がります。一つ一つの素材や納まりの検討を重ね、それを施工する職人の技術があることで初めて出来上がるのです。作り手の想いが吹き込まれたそれぞれの設えを、そこに暮らす家族が世代を通して使い続けていくことこそ、これからの時代には求められているのではないでしょうか。
庭との関係性
家づくりにおいて、建物の計画と庭・外構の計画は一体で検討します。敷地全体をどのように使い、ウチとソトがどのように繋がるかを計画するかが心地よさに大きく影響するためです。開口部の先に、庭に木々があることで私たちは四季の移ろいや光や風の動きを感じることができます。夏は日差しを遮り影を作ってくれ、季節が巡る中で花や実をつけ楽しませてくれます。枝葉に光や風が当たることで自然が生み出す動きを届けてくれるのです。
庭があることで、室内からの眺めをよくするだけではなく、地域の人に対しても緑を提供することで心地良い景色をつくりだすことができます。家族が時と共に成長していくのと同じように、庭の木々が育ち、その景色が家族の思い出と共に刻まれていくことは、とても豊かな記憶であると考えます。