GX志向型住宅とは？補助金の条件・申請方法・必要な設備までわかりやすく解説

近年、地球温暖化やエネルギー問題への対応として、各国で脱炭素や省エネ推進の動きが強まっています。日本でも、基準を満たす家を建てれば補助金がもらえる制度が整備されており、住宅分野も例外ではありません。その代表例が「GX志向型住宅」です。

名前だけ聞いたことはあるけど「結局どんな補助があるのか、その条件が分からない」という方も多いのではないでしょうか。この記事では、GX志向型住宅の基本から補助金の内容、満たすべき条件、設備のポイントまで分かりやすく解説します。

GX志向型住宅とは環境にやさしい省エネ住宅のこと

GX志向型住宅とは、国が定めた省エネ基準を満たし、CO₂排出を減らす取り組みを取り入れた住宅のことです。GXは「グリーントランスフォーメーション」の略で、環境への負荷を減らす暮らし方への転換を意味します。GX志向型住宅は、断熱性能が高く、冷暖房効率の良い構造でエネルギーの使用量を抑えるよう設計されています。

さらに、家庭内のエネルギー消費を「見える化」できるHEMS（ヘムス）、空気の熱でお湯を沸かす省エネ型のエコキュート、昼間に太陽光で発電した電気をためられる蓄電池などを導入することで、電力の自給自足に近づけるのが特長です。

国はこうした住宅の普及を後押しするために、補助金制度を設けています。省エネ性能を高めながら、家計の負担も減らせるGX志向型住宅は、これからの時代に求められる新しい住まいの形といえます。

GX志向型住宅の建設では補助金制度を活用できる

国はGX志向型住宅の普及を進めるために、補助金制度を設けています。これらの制度を上手に活用すれば、初期費用を抑えて、環境にも家計にもやさしい住まいを手に入れやすくなります。ここでは、補助金の内容や申請方法、受け取るタイミングについて分かりやすく解説します。

補助金の内容

GX志向型住宅を新築する場合、国の「子育てグリーン住宅支援事業」により、1戸あたり最大160万円の補助金を受け取れます。これは長期優良住宅（最大100万円）やZEH水準住宅（最大80万円）と比べても高く、GX住宅の普及を後押しするために設けられています。

この補助金は、子育て世帯でなくても利用できます。年齢や家族の人数にかかわらず、一定の性能基準を満たせば、誰でも対象になります。補助金を受けるには、国に登録された「住宅支援事業者」と契約し、断熱性能やエネルギー消費量の基準をクリアした住宅を建てる必要があります。

ただし、申請や手続きは原則として工務店側が代行してくれるため、施主（建て主）自身で申請書などを作成する必要はありません。まずは、その制度に詳しく対応している工務店に相談するのが最初の一歩です。補助金には予算上限があるため、検討中の方はできるだけ早めに動き出すことをおすすめします。

申請方法とタイミング

GX志向型住宅の補助金は、国の「子育てグリーン住宅支援事業」を通じて支給されます。申請手続きは、家を建てる人に代わって、施工を担当する工務店（登録された住宅支援事業者）が行います。そのため、複雑な書類の準備や申請は基本的に自分でやる必要はありません。ただし、補助金を受け取るには以下の条件を満たす必要があります。

補助金の交付申請期間は2025年5月14日から12月31日までですが、予算がなくなり次第終了となります。また、申請を確実に通すための「申請予約」も5月14日から11月14日まで受け付けています。少しでも早めに工務店へ相談することをおすすめします。

GX志向型住宅の条件

GX志向型住宅は、国が定めた省エネ基準をクリアし、CO₂排出をしっかり減らす性能が求められます。だからといって「ちょっとエコっぽければOK」というわけではありません。

家を建てる人自身に特別な条件があるわけではありませんが、どんな設備や性能が備わるのかを知っておくと、完成後の暮らしがより楽しみになります。ここでは、GX住宅に必要とされる具体的な要件をわかりやすく解説します。

断熱等性能等級6以上

GX志向型住宅では、断熱等性能等級6以上が必要です。これは国が定める断熱性能の中でも高い水準で、外の暑さや寒さの影響を受けにくく、室内の温度が安定しやすくなります。たとえば、夏は冷房の冷気が逃げにくく、冬は暖房の暖かさが長持ちします。

その結果、冷暖房の使用を減らせるため、光熱費の節約も可能です。この等級は、ZEH住宅でも採用されている性能で、省エネと快適性の両立が期待できます。「夏でも涼しく寝られる」「冬に足元が冷えにくい」といった声も多く、ヒートショックのリスクも軽減されます。

毎日の暮らしを快適にしながら、エネルギー消費を抑えられるのが、断熱等級6の大きな魅力です。

一次エネルギー消費量を35％以上削減

GX志向型住宅では、建物の一次エネルギー消費量を基準値から35％以上削減することが条件です。一次エネルギーとは、石油・ガス・電気など、私たちの生活に直接使われるエネルギーのもとになるものを指します。

この基準を満たすには、家そのものの断熱性や気密性を高めるだけでなく、高効率な給湯器やエアコン、LED照明など、省エネ性能の高い設備の導入も必要です。これにより、日常的な電気代・ガス代を大幅に抑えることができ、環境への配慮だけでなく家計面でも大きなメリットがあります。

太陽光発電などと組み合わせれば、より自給自足に近い暮らしも実現可能です。GX住宅は「使うエネルギーを減らす工夫」がきちんと設計に組み込まれているため、住む人にとっても無理なく省エネな暮らしが叶います。

再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量を100％以上削減

GX志向型住宅では、再生可能エネルギーを含めた一次エネルギー消費量の削減率が「100％以上」であることが原則条件です。これは、家庭で使うエネルギーを太陽光発電などで実質的にすべてまかなう「ゼロエネルギー住宅（ZEH）」を実現する考え方に近いものです。

たとえば、建物の断熱性を高め、消費エネルギーを減らしつつ、太陽光発電などでその分をしっかり補えば、「100％削減」を達成したとみなされます。これにより、家庭のエネルギー収支は±0以下になり、CO₂排出の大幅な抑制にもつながります。

なお、寒冷地や都市部の狭小地など、太陽光発電の設置が難しい場合には緩和措置もあり、75％以上の削減や「ZEH Oriented」仕様でも対象となるケースがあります。

高度エネルギーマネジメント（HEMS）の導入

GX志向型住宅では、HEMS（ヘムス）の導入が必須です。HEMSとは「Home Energy Management System」の略で、家庭内のエネルギー使用状況を“見える化”し、効率的な省エネをサポートするシステムです。たとえば、どの時間帯に電気を多く使っているのか、エアコンや冷蔵庫がどれくらい電力を消費しているかをモニターなどで確認できます。

これにより、無駄な電気の使い方に気づきやすくなり、自然と省エネ意識が高まります。また、太陽光発電や蓄電池と連動させることで、「いつ電気をためて、いつ使うか」の管理も可能になります。将来的に電気代の変動があっても、自分で調整しやすくなるのは大きなメリットです。

HEMSは「エネルギーの使い方を自分で選べる」ようにしてくれる頼もしい設備といえます。GX志向型住宅において、欠かせない中核機能のひとつです。

GX志向型住宅での推奨設備について

GX志向型住宅には満たすべき明確な条件がありますが、それとは別に「導入が推奨される設備」も存在します。これらは必須ではないものの、エネルギー消費量の削減や再生可能エネルギーの活用を助けるために有効とされています。ここでは、制度上の必須ではないものの、GX住宅にふさわしいとされる主な推奨設備を紹介します。

高効率給湯器（エコキュートなど）の設置

GX志向型住宅では、一次エネルギー消費量の削減を助ける手段として、高効率な給湯器の導入が推奨されています。中でも代表的なのが「エコキュート」です。これは空気中の熱を利用してお湯を沸かす仕組みで、従来の電気温水器と比べて使用電力量を大幅に減らすことができます。

エコキュートは、夜間の安い電気を使ってお湯をためるため、電気代を抑えやすいという特徴があります。GX住宅においては、こうした省エネ設備を取り入れることで、効率的にエネルギー削減目標を達成しやすくなります。また、太陽光発電システムと組み合わせれば、発電した電気でお湯を沸かすことも可能です。

自宅で使うエネルギーを自分でまかなう「自家消費」の割合が高まり、環境にも家計にもやさしい暮らしを実現できます。エコキュート以外にも、エコジョーズ（ガス）などの省エネ型給湯器で同様の効果が期待できます。

蓄電池やV2H設備の導入

GX志向型住宅では、エネルギーの自給自足や非常時の備えとして、蓄電池やV2H設備の導入が推奨されています。蓄電池は、太陽光発電でつくった電気をためて夜間に使える設備です。これにより、日中に余った電力を無駄なく活用でき、電力会社から買う電気を減らせます。停電時も一定時間、家電を使える安心感もあります。

V2Hは「Vehicle to Home」の略で、電気自動車（EV）のバッテリーを家庭用電源として使う仕組みです。EVがあれば、充電と放電を切り替えて家庭内の電力を補うことができ、災害時の備えとしても高く評価されています。GX住宅の性能をさらに引き出し、環境・防災・家計のすべてに配慮した暮らしを実現する設備として、検討の価値があります。

GX志向型住宅を建てるメリット

GX志向型住宅の魅力は、暮らしやすさと経済性をどちらも実感できるところにあります。断熱性能が高いため、夏は涼しく、冬は暖かく、エアコンに頼りすぎない快適な暮らしがしやすくなります。太陽光発電や高効率な設備を組み合わせれば、電気代を大きく抑えることも可能です。

また、室内の温度差が小さいことでヒートショックのような健康リスクが減り、花粉やカビを防ぐ換気設備も、空気の質を保つのに役立ちます。さらに、省エネ性能の高い家は将来的にも評価されやすく、売却や資産運用の面でも有利になる可能性があります。

GX住宅は、毎日の快適さにくわえて、未来にも安心をもたらしてくれる住まいです。

GX志向型住宅を建てるデメリット

GX志向型住宅には多くの魅力がありますが、あらかじめ知っておきたい注意点もあります。たとえば、一般的な住宅に比べて初期費用が高くなりやすいという点です。高性能な断熱材やHEMS、太陽光発電などの導入により、建築コストが上がる傾向にあります。

ただし、光熱費の削減や補助金の活用を通じて、長期的にはトータルコストが抑えられるケースも多く、初期費用の高さは時間とともに回収できる可能性があります。

また、すべての工務店がGX住宅に対応しているわけではないため、依頼先の選定にも注意が必要です。制度や申請に詳しく、実績のある工務店と相談しながら進めることで、無駄なトラブルを避けやすくなります。

GX志向型住宅を建てる際の工務店選びのポイント

GX志向型住宅の補助を受けるには、国に登録された「GX建築事業者」と契約する必要があります。さらに、この住宅には省エネ性能や設備の知識、確かな施工技術が求められるため、信頼できる工務店を選ぶことがとても大切です。

一生に一度の大きな買い物だからこそ、安心して任せられる相手かどうかを見極めましょう。ここでは、工務店選びで注目すべきポイントを紹介します。

国に登録された「GX建築事業者」である

GX志向型住宅の補助金を受けるためには、施工を担当する工務店が「GX建築事業者」として国に登録されている必要があります。これは、一定の技術力や知識を備え、制度の要件を正しく満たせる体制があると国から認められた事業者のことです。

「GX建築事業者かどうか」は、国土交通省の「子育てグリーン住宅支援事業」などの公式サイトで検索できます。また、気になる工務店があれば、問い合わせの段階で「GX建築事業者として登録されていますか？」と確認するのもおすすめです。

制度への理解が浅い事業者だと、補助金申請のミスや性能要件を満たさないリスクもあります。一生に一度の住まいづくりを安心して任せるためにも、最初に確認すべき大事なポイントです。

省エネ住宅の施工実績が豊富にある

GX志向型住宅は、高い省エネ性能が求められる住宅です。そのため、これまでに省エネ住宅を多数手がけてきた工務店かどうかは、選ぶ際の重要な判断材料になります。

そもそも省エネ住宅とは、断熱性や気密性に優れ、冷暖房などのエネルギーを効率よく使える住宅のことです。ZEHや長期優良住宅を扱っている工務店は、GX住宅にも対応しやすい傾向があります。

実績のある工務店は、断熱施工の精度や設備選びのノウハウが豊富で、要件を無理なく満たす提案をしてくれます。施工例やお客様の声は、工務店の公式サイトやSNS、住宅展示場で確認するのが有効です。

GX住宅と暮らしやすさの両立に理解がある

GX志向型住宅を建てる際は、省エネ性能だけでなく「実際に暮らして快適かどうか」まで配慮できる工務店を選ぶことが大切です。断熱性や気密性といった性能面はもちろん、自然光や風の通りを活かした設計、家事動線や収納の工夫など、日常の使いやすさにまで目を向けられるかがポイントです。

また、省エネ性と居心地のよさを両立するには、単に設備を並べるのではなく、住まい全体のバランスを考えた提案が必要になります。性能と感性のどちらにも目を向けた住まいづくりに慣れている会社なら、GX住宅でも快適な暮らしを無理なく実現できるはずです。

GX志向型住宅以外の補助制度

GX志向型住宅は、最大160万円の補助が受けられる制度で、補助金額の大きさや高い省エネ性能が魅力です。ただし、求められる基準が厳しく、すべての住宅が必ず対象になるとは限りません。仮にGX志向型住宅の補助が受けられなかったとしても、新築時に活用できる補助制度はほかにもあります。

たとえば、「長期優良住宅」や「ZEH水準住宅」といった制度があり、それぞれ別の条件で補助金を受け取ることが可能です。なお、これらの補助金は併用できないため、自分の住宅計画にもっとも適した制度を選ぶことが重要です。

長期優良住宅｜耐震性・省エネ性などの基準を満たす家に最大80万円の補助

長期優良住宅は、耐震性・省エネ性・劣化対策・バリアフリー性など、国の定めた基準を満たす住宅に対して補助が出る制度です。対象は「子育て世帯」または「若者夫婦世帯（夫婦のどちらかが39歳以下）」で、補助金は最大80万円（建替なら最大100万円）支給されます。

申請は着工前に必要ですが、通常は工務店などが代行してくれるため、施主が自分で手続きする必要はほとんどありません。ただし、自宅として居住することや床面積が50㎡以上など、いくつかの基本条件はあります。制度を利用できるかは、事前に施工会社へ確認しておくのが安心です。

ZEH水準住宅｜光熱費ゼロを目指す家に最大40万円の補助

ZEH水準住宅は、高断熱・高効率設備を備え、使用エネルギーを大幅に削減できる住宅に対して補助が出る制度です。対象は「子育て世帯」または「若者夫婦世帯（夫婦のどちらかが39歳以下）」で、補助金は最大40万円（建替なら最大60万円）支給されます。

太陽光発電の設置は必須ではありませんが、断熱性能や一次エネルギー消費量の削減率など、一定の性能基準を満たす必要があります。申請は工事着手前に行いますが、実際の手続きは施工会社や設計事務所が対応してくれるのが一般的です。自ら申請作業を行う必要は基本的になく、補助対象になるかどうかは設計段階で相談すれば確認できます。

先ほど解説したとおり、GX志向型住宅の補助制度とは併用できないため、住宅の性能や条件に応じて、どの制度が合っているかを事前に見極めておくことが大切です。

GX志向型住宅に関する良くある質問

GX志向型住宅についてここまで解説してきましたが、制度を実際に利用するうえで、またまだ気になることや不安なことがあるという方もいるでしょう。ここでは、GX志向型住宅に関する3つのよくある質問に答えていきます。

GX志向型住宅の補助金はいつまで？

GX志向型住宅の補助金は、2025年12月31日まで申請可能ですが、国の予算枠に達し次第、受付が終了します。申請は第Ⅰ期（5月）から第Ⅲ期（12月）まで段階的に行われ、、最終期では総額500億円の上限に達すると早期終了となるため注意が必要です。

対象となるのは、2024年11月22日以降に基礎工事以降の工程に入った住宅です。申請前に交付申請の予約も可能で、有効期限は予約日から3ヶ月または年末の早いほうまで。

さらに、補助金を受け取るには工事完了後の報告も必要で、戸建て住宅の場合は2026年7月31日までに提出しなければなりません。申請は先着順で予算が消化されるため、補助制度を利用したい場合は、余裕をもって早めに行動することが重要です。

GX志向型住宅にHEMSやエコキュートは必ず必要？

GX志向型住宅の補助金を受けるには、HEMSの設置が必須です。対象となるのは、国が定めた「ECHONET Lite AIF仕様」に対応したHEMSコントローラで、これを設置していないと申請できません。機種の詳細や報告資料の提出などは、施工会社と相談しながら進めれば問題ありません。

一方、エコキュートは必須ではありません。ただし、GX志向型住宅は一次エネルギー消費量を35％以上削減する必要があるため、高効率な給湯器を入れたほうが条件をクリアしやすくなります。

なお、エコキュートを設置する場合、「給湯省エネ2025事業」など別の補助金を併用できる可能性もあります。全体の性能バランスを見て、設備選びを進めましょう。

GX志向型住宅の申請には費用がかかる？

GX志向型住宅の申請自体には、国に対して支払う申請料のようなものはありません。ただし、実際の手続きは多くの場合、施工会社などが代行するため、代行手数料として数万円〜10万円程度の費用がかかるケースもあります。

また、必要書類であるBELS評価書などを取得する際に、別途発行費用が数万円発生することもあるため、注意が必要です。事前に見積もりを取り、標準に含まれている内容と追加費用が発生する部分を確認しておくことが大切です。

自然素材の家とGX住宅で理想の暮らしを実現しよう

GX志向型住宅とは、国が定めた高い省エネ性能や再エネ導入などの基準を満たす住宅のことです。ZEHや長期優良住宅などがこれに該当するケースもあります。補助金を利用できるだけでなく、断熱性や快適性にも優れており、毎日の暮らしやすさにもつながります。

さらに自然素材を取り入れることで、心地よさや健康面の安心感も高まります。仮にGX志向型の基準を満たせなかったとしても、他の補助制度を活用すれば、十分に環境に配慮した家づくりは可能です。制度をうまく使って、家族にやさしい住まいを実現しましょう。