日射をデザインする

- 家づくりのこと

5月に入り、過ごしやすい季節の中、少しずつ暑い日も出てきましたね。
今年は今までにない過ごし方を余儀なくされていて、お疲れの方もいらっしゃるかもしれませんが、今回はひと呼吸ついて、設計の話題を取り上げたいと思います。

建物の設計の良し悪しを測る物差しは様々ありますが、その中でも外的要因をいかに取捨選択して中に取り込むか、又は遮るかということが挙げられます。中でも一番イメージしやすいのが「日当たり」ではないでしょうか。

日本という国は温暖湿潤気候に属し、四季折々の豊かな季節感が感じられる地域です。その気候風土が、まさに日本人という国民性を長く育んできました。この表情豊かに変わる季節というものも太陽と密接な関係にあります。

例えば夏は日が長く、冬は日が短いということを私たちは生活の経験から知っていますが、太陽高度が変わっているということをご存じですか?

たとえば草津市の例を見てみると、
夏至の正午の太陽の位置はほぼ真上(78.4°)にあるのに対し、冬至では31.5°と低い位置から日が差します。

下のグラフは建築士の試験等で、よくお目見えする季節と方位別の終日日射量を示したものです。

わかりやすく図にしてみると、

一年を通して見ても夏至の水平面の日射量が飛び抜けて大きくなります。

日射熱を内部に入れることが一番不快な季節に、最も効果的な対策は「南面に深く軒を取る」ということが読み取れます。

また夏至では、南面よりも東西面の横方向に入ってくる日射も室内環境に悪さをする要因になりやすいです。夏の西日に代表されますが、これは軒の出では遮ることが出来ない為、植栽やスダレ等が有効な対処法になります。

私たちも設計において、日射をどう遮るか、または取り込むかを計画し家づくりを行っています。

先人たちは細かな自然の事象を身体的に理解して、軒の深い建物の形状や、家相に代表される方位と部屋の用途の関係性といった家の有り様に行きつきました。

兼好法師が徒然草の中で「家の作りやうは、夏をむねとすべし」と言っておられるのは有名な話で、温暖多湿な日本の風土をよく言い当てています。

温故知新。

先人たちの暮らしに思いを馳せながら良いものを引き継いでいく。こんな贅沢は後から生まれたわたしたち現代人の特権ですね。

その他のブログ