入社7年目、モデルハウスを経て。

- 家づくりのこと

今春 4月17日、株式会社スムース初のモデルハウスが晴れてオープン致しました。

このブログではスムースのモデルハウスの工事監理を担当した私、岸本が入社からモデルハウスの工事を終えるまでの振り返りと今の想いを書き綴ります。

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はじめに、私が株式会社スムースに入社したのは2015年の3月のことです。

当時27歳の私は、二級建築士の資格だけを武器にスムースの採用面接に足を運んでいました。
浅はかにも設計としての入社を希望していた私に市川社長は、「今、設計志望の子は多いから・・・。3年かな。現場監督として3年現場を学んでそれから設計をやってくれ。」との返答。

それでも採用頂けるのならと二つ返事で入社を希望していました。
その後、採用の連絡を頂いてから前職を退職するまでの期間、毎週休日になると勉強として業務のお手伝いにスムースに足を運んでいました。

そして2015年の3月21日、晴れてスムースの現場監督としての門出を迎えた私に待ち構えていたのは現場監督としての日々ではなく、社長のお父さんであり大工の坂本さんに運転手としてついて回って実際に現場で作業をするという1年間でした。

正直、二級ではありながら、簡単ではない建築士の資格を習得して行う仕事としてはキツイ1年間でした。しかし多くを学んだ1年間でもあったと思います。

そうして、入社から2年目に入った頃から次第に現場監督として少しずつ担当をもつようになっていき、現在に至るまで、現場監督として沢山の素敵なお家の家づくりに係わらせていただきました。

現場で大工さんや職人さんからしごかれつつ、現場監督として多くの経験を積めているは、今ではなくてはならない経験だと感じています。

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さて、ここで「現場監督」というと、皆さんどの様な仕事を想像されるでしょうか? 正直何をしている人なのかはよく分からないという方がほとんどではないでしょうか。

実際の現場監督の仕事は多岐にわたります。

・現場の職人さんへの指示
・工程通りに工事を進めるための工程管理
・工事費用を予算内で進めるための予算管理
・図面の通りに工事が進んでいるかを確認する品質管理
・各建材、設備機器の発注業務

上記の内容が基本的な現場監督の業務内容です。

加えてスムースでは、

・積算(見積もり)業務
・構造計算を元にした骨組の図面と設計内容との不整合が無いかの確認、検討
・自社の設計士が設計した基本図面を元に平面詳細図及び各部詳細図を作図
・作図した詳細図面に合わせて造作材の寸法を拾い出し発注する業務

以上を主に現場監督が行う業務としています。

業務内容が多岐にわたり、ボリュームも多いためハードではありますが、やりがいのある仕事でもあります。特に詳細図の作成という点においては設計的な性質もあるため、実際に建物が出来上がった時の喜びも一入です。

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そして、入社から5年と半年が経った頃、

入社当時は設計を志望していて、そのことに変わりはないものの現場監督として自分にしかできない仕事、自分に求められる仕事へのやりがいを感じ、日々より良い家づくりへと邁進していたある日に、

突如自身の担当として舞い込んできたモデルハウスという大きな仕事。

庭に開かれた大開口木製サッシと内障子、その大開口窓に面する様に設置されるオリジナルの造作ソファ、全周を無垢の板で仕上げる造作キッチンやそれに付随する食器棚、天井や壁をヒノキの板張りとした浴室、採用を推し続けていた念願の本焼き焼き板外壁、ありとあらゆる部分でこれまで培ってきた力が試されていると感じました。

図上で線を走らせながら細部のデティールに至るまで何度も繰り返し検討し、mm単位の調整を行い、質が高く心地よい空間を目指す。作成した図面をもとに設計士のスタッフ、奥と仕上がりのイメージを共有し、より一層緻密さを高めていく。

求められている結果に対して、不思議とプレッシャーは無く、奥と何度もコミュニケーションを取りながら、凄い家ができるぞという期待が日々募っていました。

大工工事はスムース大工長である榊原大工さんにお願いしました。
工事過程で榊原さんから数えきれないほどの質疑を受けて、その度に現場での打ち合わせ。図面の通りに綺麗に納まるところもあれば、一部、調整や改良の必要な所もあり、長年の大工さんの技術と知恵が遺憾なく発揮される。

大工さんだけでなく、スムースに関わってくださっている沢山の優れた職人さんが惜しまずに力を発揮してくださり、いくら図面上で検証してもそれは机上の空論に過ぎず現場で働く沢山の人の優れた力が一つのものづくりのために掛け合わされて昇華することで建築という大きなものに生命が吹き込まれていくのだと痛感します。

そうして4月16日いっぱいまで時間を使い切り、ようやく完成したモデルハウス。

近年のスムースのSDGsに対する働きかけを取り込み、エコロジカルな視点から住まいを考え、国産地産の素材にこだわり、細部まで意識して構成された空間は、言葉では形容しがたい快適さや心地よさを感じることができる場所になっています。

建築を消耗品として扱い、建てては取壊しを繰り返すスクラップアンドビルドから脱却するために、世代を渡って大切にされるような家を創り続けること。

住み継ぐことで地球環境への負荷を低減する社会を目指して、建築に関わる者と建築に住まう物の資質がいま問われているのではないでしょうか。

岸本 真聡

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