名栗
最近、スムースの家づくりでよく採用されている名栗(なぐり)仕上げ。
木の表面に独特の削り痕をほどこした加工のことで、味のある表情とポコポコとした触感が心地よいのが特徴です。
スムースでは玄関ホールの床や畳スペースの板間などで使われ、雰囲気のある佇まいをみせています。
足裏に気持ちよく、光が差し込むと陰影が表れてとてもきれいです。
この名栗という名前、不思議な名前だなと思っていたのですが調べてみると、由来は丹波の杣職人が栗の木を削って作ったのが始まりで、栗材の柱を手斧で削った柄が評判がよく、殴って削った工法との掛け合わせで名栗と呼ばれるようになったとか。
もともとは山から丸太を運ぶ際に虫に食われないように皮やシラタ(樹皮に近い周辺部)を削る処理が目的だったと考えられるようです。
丸太を守る処理技術に、職人さんの遊び心やセンスが加わり生まれた形だったのでしょうか。
削る際には、釿(ちょうな)や予岐(よき)※ などの道具が用いられます。※予岐は斧のこと
↑ 釿(ちょうな)
出典:公益財団法人 竹中大工道具館(https://www.dougukan.jp/tools/42-2)
↑ 予岐(よき)・斧
出典:公益財団法人 竹中大工道具館(https://www.dougukan.jp/tools/42)
これらの道具で繊細な文様を生み出すには、相当熟練した技術や体力が必要だろうと思います。
今では機械加工が多くなったようですが、山から切り出した丸太にひと振りひと振り、力強くも細やかな加減で刻む職人さんの姿が目に浮かんできます。
波のようなデザイン以外にも様々な柄が生まれ、古くから化粧梁や濡縁・腰板・床柱など多くの用途に使われてきた名栗加工。特に数寄屋建築には欠かせなかったようです。
脈々と継承されてきた日本の伝統。
この伝統がこれからも大切に残っていってほしいと思います。
今回は由来を調べることで、先人のものづくりに対する心意気や、住まいへの豊かな感性が、この味わい深い名栗の表情に詰まっていることを実感しました。