外構のおはなし⑤ モデルハウス外構設計の苦悩(後編)
①気配
まずは窓を開放させる方法を検討した。今回は窓に障子が取り付けられる。レースカーテンのように、向こうが透けて見えるわけではないが、そのかわり光と影を感じることができる。できるだけ建物際に植栽を寄せ、影絵のように庭の気配を魅せることとした。
②狭さを広さに
広さの感覚は視線の抜けによって変化する。同じ広さの部屋でも窓の有無で、開放感や閉塞感は変化する。庭もまた然りである。壁に囲われた庭よりも、部屋とひとつづきになった庭の方が広く感じる。
そこで、縁側をつくり、庭先までコの字型に渡すこととした。 そして縁側の幅を、手前を広く、奥を狭くし、遠近法を用いて奥行きを演出することとした。
③天井のない部屋
道路や隣地からの視線をカットするために、板塀や植栽を描きこんだ図面をみると、なんだか部屋のように見えた。床があって壁がある。LDKとひとつづきの、もう1つの空間。座りたい場所に緑陰を配置すると、「雑木の部屋」ができた。どこまでも抜ける青天井。解放感の答えが見つかった気がした。
④日々の暮らしが優しくなるきっかけを
機能的、効率的に暮らす。それだけでは物足りない。そう思うのは、わがままかもしれない。それでも、コーヒーの香りにゆったりとした気分になったり、暮らしの道具を慈しんだり、何気無いことに気づいて微笑んだり、そんな余白が、暮らしには必要だと思ってしまう。
大切にしたいのは、当たり前のことに、当たり前に気づくということ。
季節はめぐるし、時は流れるということ。
天井のない雑木の部屋は様々な日変化や季節変化を体感することができる。
しとしと降る雨の日の美しさにも、きっと気づく。
縁側を軒の中に収まるようにしたので、濡れる場所と濡れない場所がグラデーショナルに広がる。鎖樋も雨をデザインする添景になっている。現場監督さんが位置出しにこだわって、縁側の入り隅に配してくれた。真っすぐに落ちる鎖樋と、生命力にあふれた樹々との対比が美しい。
雨音を聴きながら、縁側で読書。そんな豊かな時間が想像できる。
⑤灯す
プランはできた。ふと不安になった・・・。
本当にこの形が実現できるのか、再度現地を見に行った。
・・・隣地が上棟している!更地だった隣地に建物がたっていた。想像の斜め上を行く建物だった。敷地いっぱいに建てられた大きな家。3時過ぎには、その影に庭が入ってしまうだろう・・・
・・・ならば、
黄昏時から明かりを灯して、しっとりとした雰囲気を醸し出そう。
あわてて照明を選ぶ。と同時に、「お帰りなさい」が演出できそうと閃き、縁側をポーチまでのばす。渡り廊下のように延びた縁側。大開口の窓からもれ出る灯り。ポーチから見えるであろうこの一瞬の風景。一番好きな風景になりそうな予感がした。
オープン時に新芽をのぞかせはじめた木々は、今、美しい新緑の頃を迎えています。
ゴールデンウィーク中もモデルハウスはご見学を受け付けておりますので、ご都合がよければぜひお越しください。
ソファーに座って、窓からの心地よい風とともに庭を眺めていただけたら何よりです。
モデルハウス「住み継ぐ暮らし」
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