住み継ぐこと
夏の様な気候が続いていましたが、いよいよ梅雨入りしたようですね。
夏でもマスクをつけるのが当たり前になりましたが、暑がりの自分にはつらい季節です。早くマスクが不要な世界が戻ることを強く願っています。
さて、今回ご紹介する現場は、草津市内の旧家のお住まいで、おじいさまとおばあさまの住まわれる母屋の一部改修工事です。
代々大事に住み継がれてきた土地の中に母屋と息子様世帯が住まわれる離れ、また納戸など広い敷地の中にはたくさんの建物が建っていました。
今回、老朽化が著しい建物や塀を一部解体する等して住環境を整えるということが大きな主旨としてありました。
【before】
無断熱の建物で、野地板と垂木(屋根の裏側)が室内にそのまま表れています。雨漏りの形跡もあり、屋根の吹き替えと内装材のクリーニングを行います。
2世帯、3世帯住宅となると住まわれている方それぞれに色んな思いがあられます。時には意見が衝突したり、妥協点を見つけたり‥‥。
それでも家族が幸せに暮らすこと、次の世代に引き継いでいくことという思いの本質的なところでは皆一致しています。
計画はなかなか一筋縄ではいかないこともありますが、それらを調整するのも大事なことだと思っています。
石場立ての家屋の為、前面に基礎がなく開放していました。換気口を設けて全面に立上りを新設しています。
床は杉の源平無節、蜜蝋ワックス仕上げ。
補修とクリーニングを行い木部の鮮やかな弁柄も装いを新たにしました。
土壁は傷みもあったので、今回、砂漆喰を上塗りしています。時を経たお住まいの雰囲気を邪魔せず自然に馴染んでいます。少し黄みがかった色味で藁を加えた仕上がりになっています。
庭に続くハキダシ窓は工事前は欄間付きでしたが、欄間を無しにしました。サッシも入れ替えて断熱性能も向上しています。
新旧の材料が入り混じって、新築では出せない時を経た重厚な表情を見せてくれます。
今回、サッシの外側に格子戸を新設しました。格子戸がつくことで室内側のカーテンは無しに出来ます。
格子戸を互い違いに立てることで連続する繰り返しの意匠がかっこいいですね。白木のままでもいいと思うのですが、美観を長く保つため黒く塗装をします。
そして立派な経年美を加えた家屋に現代の意匠を加える。
職人さんのモノづくりに対する真摯な姿勢に、お客様から素直にお褒めの言葉を頂けたのは暮らしづくりを業としている我々としても、とても誇らしくなる瞬間です。
また時を経て次の世代が更に手を加えていく‥‥。
そうやってバトンを渡していけることはとても素敵なことですね。
【after】
格子戸の陰影が奥行感を演出しており、端整なファサードを形成しています。
元々は石場立て(石の上に束がたっている形式。現在主流の基礎と木造躯体が一体になっている形式ではない)の形式だったため、床下がオープンになっていました。
今回、換気口を新設して立上りを設けています。
格子戸の方立の足元の納まり。接地すると木部に腐れがおこる為、浮かせた意匠としています。
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