居場所の作り方。

「居場所の作り方」
今回のモデルハウスの案内する冊子には、そんな題名をつけました。
そして、最初のページには、こんな言葉を書いています。
僕たちが整えたいのは、家ではなく、時間です。
どんなソファに座るかではなく、
そこで、どんな時間を過ごすのか。
どんな照明を選ぶかではなく、
その灯りの中で、どんな感情が生まれるのか。
このカタログは、モノを紹介するものではありません。
どこか「人の温もり」を感じながら、
この場所で流れている、
「時間の質」を切り取ったものです。
今回の冊子は、
インテリアや商品を紹介するためにつくったものではありません。
“どうやって居場所をつくっていったのか”
その背景にある想いや、
そこに関わった人たちの温度を、
ひとつひとつ残したかった。
だから、作家さんや職人さんの紹介も、
単なる「作品紹介」ではありません。
どんな人が、
どんな想いで、
この場所をつくってくれたのか。
そこを大切にしています。
モノには、必ず物語がある。
そして、その背景にある人の温度が、
空間の空気感をつくると僕は思っています。
その第一回として、
今回は「庭」からお話したいと思います。
実は、このモデルハウス。
建物より先に、庭から考え始めました。
この庭をつくってくれたのは、
庭師・今井海図さん。

穏やかで優しい人柄なのですが、
植物や石に向き合う感覚が本当に繊細で、
自然と人を心地よく繋いでくれる庭師です。
今回の庭づくりについて、今井さんはこう話してくれました。
湖国での庭造りを考えた時に、やはり「水」という言葉が頭に浮かびました。
この豊富な水量を表現したく、大きな水鉢を据え付けることにしました。
水源のごとく下から湧き出るようなデザインとし、
溢れた水を砂利に見立て、川となり各地へ巡ることになります。
そして庭の築山は、琵琶湖の向こう側の山と重ね、豊かな自然を表現しました。
四季の移ろいを身近に感じてもらい、日々穏やかに過ごして頂けることを願っています。

この言葉を聞いた時、
まさに今回のモデルハウスが表現したかった世界観だと思いました。
庭の中心には、
びわ湖を見立てた「水盤」があります。
使ったのは、香川県の天然石「庵治石」。
約1トンある大きな石です。
ただ石を置くのではなく、
庵治石に穴を開け、
まるで地中から水が湧き出ているように設えています。

そこから静かに流れ出た水が、
瀬田川をイメージした砂利の流れへと繋がっていく。
自然の中で、水が生まれ、流れ、巡っていく風景。
それを、この庭の中で表現しています。
約1トンの庵治石を、
みんなで運び入れた時のことは、今でも忘れられません。
“庭をつくる”というより、
“場を整える”
そんな感覚に近かった気がします。
さらに、水盤の横には、
比叡山を見立てた築山(つきやま)があります。
びわ湖があり、
川が流れ、
山がある。
滋賀で暮らしていると、
無意識に見てきた風景です。
守山石や安曇川石も使いながら、
この湖国の自然を庭の中に映しています。
植栽にも、滋賀の風景を重ねました。
高木には、
アオダモ、コナラ、カエデ。
6メートル級の木々を配置しています。
そのほかにも、
モミジ、アラカシ、ブルーベリーなど、
約50種類の植物を植え込みました。
緑の中を、
少しかき分けながら進むような感覚。
まるで森の中を歩くトンネルのように、
木々の間を抜けていく配置にしています。

だから、この場所に来ると、
「なんか落ち着く」
「ずっと居たくなる」
そんな感覚になるのかもしれません。
それはきっと、
この湖国の原風景を、
無意識に感じているから。
そして同時に、
皆さん自身の“ふるさとの情景”とも、
どこかで重なっているのだと思います。
FURUSATO RESIDENCE。
居場所を、人生の原風景に。
そのテーマは、
こうした風景の積み重ねから生まれています。
そして、この庭から見える景色と、
玄関へ入った瞬間に現れる“びわ湖の波”は、
ひとつの繋がりとして設計しています。
その波をつくってくれたのが、
左官職人・下原さんです。
土で、びわ湖の波を刻む。
次回は、
このモデルハウスを象徴する
「波壁」について、書きたいと思います。
SUMUS 20th Anniversary
FURUSATO RESIDENCE
「居場所を、人生の原風景に。」
ICHIKAWA
滋賀県草津市・大津市・守山市を中心に注文住宅を手がける工務店として、「思想」と「人」を大切にした家づくりを続けていきます。



